資金調達のエッセンス

日々の経営には資金が必要であり、ヒト・モノ・カネがグローバルに動く時代

新規事業の資金調達

新規事業において資金を調達するのは、なかなか難しいことです。 というのも、新規事業が軌道にのるまでには、どんな業種であっても数年はかかりますし、他人からの融資であれば5~6年で返済するとうのは、ほぼ難しいでしょう。

とはいえ、民間の金融機関だけに頼るだけではなく、様々な融資制度をうまく組み合わせることができれば、思い通りの資金調達できることもあります。

自己資金

自己資金だけで資金を調達できるのが1番いいのですが、そこには限界もありますので、その場合「増資」という手段を選択することもできます。

そもそも増資というのは、会社に出資してくれる人を募り、会社に資金をいれてもらうことを意味していますので、返済の義務が発生しません。 資金繰りという側面からすれば、まさに理想的だといえるでしょう。

とはいえ、「増資」者に対してはいわゆる「株主」となってもらうことですから、あまりに多くの資金を「増資」してしまうと、株主の構成が大きく変わってしまい、最悪の場合、経営権を失ってしまうということがあります。

そのため、「増資」を行ってもらうにせよ、持株比率を意識しておかなければなりません。

まず強固な経営権を持ち続けるためには、2/3以上の持株比率を抑えておきましょう。 これぐらいの比率を確保していれば、株主総会の特別決議を可決できる権利があります。

逆に気をつけておきたいのは、1/3超の持株比率で、このラインが経営権を確保し続けられる最低ラインだと思っておいてください。

増資資金の集め方

増資資金を集めるためには、会社の外部からの調達、内部からの調達にわけることができます。

配当益を狙った出資

企業は利益を計上した場合、その利益の一部を配当というかたちによって、株主に還元することになっています。 そこで、配当を出すという条件によって、出資を促します。

取引先からの出資

先程の配当益を狙った出資の場合、会社の内容などの情報を公開し、信頼を得ることが前提なのですが、取引先の場合であれば、これまでの付き合いから多くの情報を必要とせずに資金調達することができる場合があります。 もちろん、ある程度の親密さと信用がなければ出資はしてくれませんが・・・

上場益を狙った出資

上場を狙っているのであれば、出資者を募ること自体に苦労はしないと思いますが、そこに至るまでは大変です。 高額の上場準備コストがかかりますし、簡単に行おうと思えるものでもありません。

会社内部からの出資

会社の従業員から出資を募ることで比較的資金調達を募りやすいのですが、従業員のメリットが薄く、株式公開しなければ従業員へのメリットはありません。

ですので、配当を出すという条件によって、資金確保を狙うことが現実的です。

金融機関の種類

中小企業が資金を調達する場合、民間金融機関と政府系金融機関に分けることができます。

f:id:hfullife:20170914174154j:plain

民間金融機関の場合

民間金融機関も大きく分けると「メガバンク」「地方銀行第二地方銀行」「信用金庫・信用組合・協同組合」に分かれます。

まず「メガバンク」というのは都市銀行の中でもとりわけ大きな銀行のことで、明確な定義はありませんが、一般的「三菱東京UFJ」「みずほ」「三井住友」の3つを指します。

余談ではありますが、この3つに「りそなホールディングス」「三井住友トラスト・ホールディングス」が加わると「大手銀行5グループ」といい、「新生銀行」「あおぞら銀行」が加わると「大手銀行7グループ」と表現されることがあります。 基本的に融資においては「格付け」が重要となります。

地方銀行第二地方銀行」はその名の通り、地域性がもっとも強く、融資においても地域の基幹産業や地域への貢献度の高い企業や産業に対しては、業績に多少問題があったとしても応援しようとすることがあります。

「信用金庫・信用組合・協同組合」などの基本理念としては「会員や組合員の相互扶助」というものがあり、非営利ということから比較的小さい企業との取引に向いています。

また、銀行以外では「商工ローン業者」というものがあり、これは預金を受け入れない貸金業者のことで、先の銀行と比べると以下のような特徴があります。

まず銀行などと比べ、貸出金利は割高となっていて、貸出条件が厳しく連帯保証人などを求められることがあります。

しかしながら、審査機関は銀行系と比べると、ほぼ半分の期間で結論が出るため、急ぎの資金調達時に利用されることがあります。

政府系金融機関

政府からの出資によって特殊法人として設立された金融機関のことで「日本政策投資銀行」「日本政策金融公庫」「国際協力銀行」や「商工組合中央金庫」などがあります。

多くは一般銀行では対応の難しい分野の企業への貸付で、中小零細企業個人事業主を対象とした融資も行っています。

キャッシュアウトに注意

キャッシュアウトを資産に計上することによって、破綻していく中小企業が後を絶ちません。

そもそもキャッシュアウトというのは「資金の流出」のことで、キャッシュフローにおいて、お金が手元から外へ流出していくことです。

このキャッシュアウトには会計のルールによって、P/L(損益計算書)の費用に計上するものと、B/S(貸借対照表)の資産に計上するものとに分かれます。

損益計算書の場合は、人件費や修繕費などの経費に当てられ、貸借対照表の場合は、固定資産や棚卸資産、有価証券の購入などが該当します。

表面化しない痛み

費用に計上する場合であれば、その数値は「利益減」や「赤字」となって一発で損益計算書に現れてくるのですが、資産計上を行った場合だと、その痛みが損益計算書に表れてくるのが遅くなります。

どんな経営者でも損益計算書が黒字方向であれば「まだまだ大丈夫だ」と考え、直前の問題を先送りしがちで、どうしても危機感を感じることができません。

よって資産計上によって遅れてくる「キャッシュアウトの痛み」は、借金の増加によってカバーされることとなり、いつの間にか借金が膨れ上がり、金融機関に対する約定返済を減額する手続きへと進んでしまいます。

多くの経営者が陥る勘違いは「損益計算書が黒字を保っていれば、銀行は支援してくれる」というもので、計上の仕方によっては、資産だったものが実は借金でしかなかったなんてことも多々あるようです。

経営者たるもの「まだまだいける」「なんとかなる」というような根拠のない自信だけは避けたいものです。